「医療が病をつくる」
安保 徹著 岩波書店
この一連の記事は2002年のコラムから再度掲載したものです。
安保 徹先生の書物はずいぶんと出版されるようになってきましたが、この本は著者初めての本「未来免疫学」の後、3,4冊目だったと記憶しています。
まずは、本のカバーの書評から
「腰痛、アトピー性皮膚炎から胃潰瘍、糖尿病、癌にいたるまで、なぜ病は治りにくいのだろうか。著者は、人体の秘密ともいうべき自律神経系―内分泌系―免疫系の相互関連のメカニズムを解明。ストレス、免疫を理解しない治療、薬の処方が病状を悪化させていることを指摘。病気の成り立ちや薬の作用を免疫学の立場から説き明かし病気にかからないためには、またかかったらどうしたら良いのかをアドバイスする。」
この本はとてもお薦めです。目からうろこの落ちるような斬新な見解の連続で今まで熱のあるうちは冷湿布で・・などとアドバイスしていた自分の知識を引っくり返されたような思いでした。病気の成り立ちを自律神経と免疫の関係から説明しているので、アレルギー疾患で悩んでいる人やアトピーのお子さんで心痛めているご両親、鎮痛剤が手放せない方にお薦めです。
ただし、著者は医師への訴えも意図しているようでかなり専門用語が多用されています。解らない語句に引っかからずに読み進めましょう。
この本のこういった所を知って欲しい、というのがいくつもあります。それをこれから何回かに分けて紹介していきたいのですが興味が出れば、買って読んでみて下さい。
まずは自律神経と白血球の関連から。
自律神経とは運動神経のように自分の意思とは関係無く、年中無休で24時間内臓のコントロールを中心に働いている神経です。
自律神経にはシーソーのように片方が働けば、片方が休むといった関係の交感神経と副交感神経があります。
交感神経が働くときとは、身体は緊張状態にあります。動物がエサ取り行動に出るときに働く神経で運動、闘争、逃避のときに必要な機能を高めます。具体的には運動機能を高めるために心臓の働きを高め、呼吸を速くし、消化管の働きを抑制します。
また、闘争、逃避など緊急事態に対応しないといけない為、この神経が働いている時、痛みを感じる事が少ないのです。
例えば大勢の人がいる前で転倒した時、何事も無かったように取り繕い、後で落ち着いた時擦りむいた傷を痛く感じたことがあるでしょう。あの時はアドレナリンがバンバン出てて交感神経緊張状態といえます。その状態から脱した時(副交感神経への戻り反射)に痛みが感じられるのです。
副交感神経が働くときは、身体は休息状態にあります。取ったエサを消化、吸収、排泄するときに働く神経で、休息、消化、吸収、排泄に必要な機能を高めます。具体的には心臓の働きを穏やかにし、分泌現象を促進し、消化管の働きを活発化します。
上記の痛みを感じるというのはこの副交感神経が働く時の反応のようです。この本を理解するためには、「痛み」は悪いことでなく、行き過ぎた緊張状態から戻るときの一時的な反応であり体の出す正常な反応だととらえる事が重要です。
そして、この本で重要な自律神経と関連のある白血球についてです。
白血球には大きく分けて顆粒球とリンパ球がありますが、著者の研究グループではこの白血球と自律神経の間に関連があり、交感神経は顆粒球を働かせ、副交感神経はリンパ球を働かせていることを発見したのです。
顆粒球は侵入してきた細菌にくっつき細菌を食べる作用を持っています。これが増えすぎると顆粒球が出す活性酸素で組織が傷害されます。
リンパ球は顆粒球では捕捉できないさらに小さなウィルスなどを抗体という飛び道具を使って攻撃し身体を守っていますが、これが増えすぎるとアレルギーを起こします。
顆粒球とリンパ球の割合は正常な人で顆粒球60%リンパ球35%だそうですが、面白いことにはこの割合の違いで人の性格や出易い症状が異なるらしいのです。
顆粒球70%リンパ球25%の人は交感神経緊張型(顆粒球人間)で以下の性格や傾向が強いようです。
痩せ型・筋肉質、皮膚は浅黒い、脈が速い、性格は攻撃的で意志が強く集中力が高い、短期決戦の働き者。
怒りっぽくて視野が狭い、そう状態に近い、活性酸素が多い。
便秘、胃潰瘍、胃もたれ、食欲不振、癌体質。
顆粒球45%リンパ球50%の人は副交感神経緊張型(リンパ球人間)で以下の性格や傾向が強いようです。
ふくよかな体型、女性に多い、皮膚はみずみずしく色白。にこやかでのんびりした性格、ストレスに強い、感受性が強い。持続力があり長生き体質。
注意力が散漫、瞬発力は無い、鬱状態に近い。
下痢、アレルギー体質。
いかがですか?交感神経緊張型は多忙で責任重大なビジネスマンに多いタイプのようです。
私の場合2年前(2000年で今から9年前)の血液検査では顆粒球約63.5%リンパ球26.5%とやや交感神経緊張型のようでもう少し副交感神経が働くようにしなければと思っています。
定期的に健康診断を受けてる方は白血球のデータはあるでしょうから、探し出して自分が顆粒球人間かリンパ球人間かチェックしてみるのもいいですよ。
次回は引き続きこの本の中から病気の原因は?についてです。