かれこれ15年以上前になりますが、
私は手作り靴を学ぶため、原宿にある工房の門をたたきました
その工房の主宰者(私の師匠)は、父と同じ年の60を過ぎた男性でした
大手広告業界で活躍していらっしゃったのですが、50歳を過ぎて脱サラし、
全く違う仕事の手作り靴の道を試行錯誤しながら手法を見出し、
少しずつ人に手作りで靴を作ることを手ほどきされていました
その当時、手作り靴を始められてまだ10年かその位だったようですが、
その手は、何十年も靴を作っていた熟練者の手に見えました
師匠は、靴作りを誰かから手取り足取り教わったのではなく、
靴職人のところに足を運んで自分で見て、考えて、
自ら技法を作り上げたので人一倍努力されたためでしょう
昔は、仕事は先輩や師匠のすることを見て、自分で学び習得していくのが普通でしたね
でも今は、、組み立てられたカリキュラムに従って能動的に教わることしかできない人達が多く、
そのためか、折角途中までやりかけても、簡単に投げ出してしまったり、
ちょっと出来るようになっただけで満足してしまって、
またちょっと興味の出た違うことを始めて・・・ということがあると聞きました
そういう人達は、ある意味、世の中をずっと彷徨ってサーフィンしているような感じがします
そんな時代の中、師匠は既製靴ではなく手作り靴なのか・・・その意味を説いて、
首尾一貫して人々に手作り靴のワークショップを続けています(詳しくはhttp://mogeworkshop.com/)
そのパワーたるや言葉に表すことが出来ません
自分で納得できるシゴトができる環境を求めて、工房は原宿から始まり、
表参道、外苑前、75歳を過ぎていらっしゃるにもかかわらず、
今年から元代々木に場所を移されて、今も現役で活動されています
その新しい工房に、先日お邪魔してきました
元代々木には初めて行ったのですが、一本裏に入ると、
おしゃれなカフェやレストラン、
個性あるファッションのお店があり、
一方、昔から営業している一人商いの店がある、新旧融合した住宅街といった感じでした
とても温かみのある心地の良い所で気に入りました
工房は、私が学んでいた頃からは想像もつかないくらい生徒さんが増えて、まさに、学校でした
でも、師匠の大切にしている雰囲気(空間)は15年前のまま
この空間が好きで、みんな同じ感覚の人が集まってくるのでしょう
初めてなのに、妙に安心感があって、
ビルの1Fにあるカラス張りの工房にずっと座っていたいと思ったほどです
そして、何より、現在靴作りを勉強中の人達の空気と、
現役で頑張っている師匠のエネルギーが、私にパワーをくれました
気持ちが良くなったので、新緑の中を一駅分歩いて帰りました
Archive for the ‘靴のこと’ Category
☆パワーのでるところ☆
☆タテ糸ヨコ糸☆
私が靴を作るシゴトにつく足がかりを作ってくれたのは原宿の靴工房です。
その工房の主宰である師匠が、7年ほど前ケガで入院をしていました。その師匠のお見舞に行った時に聞いた話です。
今現在靴を作っている手仕事(手私事と師匠は言っている)をハタオリに例えると、技術が「タテ糸」で自分のコンセプトは「ヨコ糸」である。
私達、靴の作り手の取り組みはこのタテ糸とヨコ糸を組んで、1枚の布に仕上げることに似ている。
習得した技術が例え同じであろうと、仕上った布は十人十色。その布は、作り手の個性であり、自己表現・・・いや、その人間そのものなのだ。その人が感じたコト、経験したコト、考えたコトetc…がぎっしり詰まったその布で、何を包むか?
これは、どうコミュニティ(履く人、同業の仲間、その他周りの人々や社会)と関わっていくか、ということが我々の課題である。との事。
師匠曰く私には、足のメカニズムについての研究や、リフレクソロジーといったヨコ糸がある。
そのコンセプト=「ヨコ糸」でどういった布が出来あがるか楽しみにしている・・・と。
常に一生懸命取り組んでいるつもりですが、ともすれば目的意識を無くしてしましそうな毎日。
これは私達、靴の作り手だけでなく、あらゆる分野の人に当てはまると思います。
師匠の話を聞いて、一筋の光明をみたような気持ちになりました。
入院中の師匠を励ましに行ったつもりが、逆に励まされて帰ってきたのを思い出します。