前回からの続きで急に起きる激しい腹痛について。
「急性腹症」とは以前臨床医学総論で覚えた知識としては、突然急激に起こる激しい腹痛を引き起こす疾患の総称ということでした。
緊急に手術が必要な代表的な疾患は、急性虫垂炎、急性胆のう炎、急性膵炎(これは怖い。膵臓が自己消化をしてしまう)
消化器の各所で穴が空いてしまう穿孔、大動脈解離・破裂、イレウス、子宮外妊娠、卵巣茎捻転など等。
消化器科、循環器科、婦人科など複数の科にまたぐ疾患で急性腹症が引き起こされるのが分かります。救急外来の医師はただの腹痛と侮れず緊急に手術をしなければ命にかかわる症例もあるわけです。
その鑑別診断は大変なことだと思います。
前回のブログ記事にもあるとおり、急性虫垂炎のような急に起きる激しい腹痛が自分にあったのはいつのことだろう?と振り返った時思い出したのが中学2年生の体育祭の時でした。
リレーの出番を控え、体育祭の会場をぐるりと友達と歩いている時にその激しい腹痛は起きました。
(出番を控えプレッシャーから起きたんじゃないか?って、いえいえ、違います。当時の私は陸上部で走るのが速いことを自慢できる絶好の機会だと張り切っていたぐらいですから)
で、その痛みに立っていれない。
うずくまっても痛みが取れなく、寝転がることに。
どの体勢をとっても痛みは和らがず、転げまわるような状態になってしまいます。
それを見た友達が先生を呼んできてくれ、その先生におぶさって貰いながら先生の車へ。
中学校近くの個人医の内科診療所へ連れて行ってもらいました。
待合室でもソファーの上で転げまわりながら痛がっていたのです。
しばらくして、診察をしてもらったのですが、その内容は問診と触診をしただけで何かの注射を打たれて終わりです。
先生から連絡があり駆けつけた母とタクシーで自宅へと帰ったのですが、帰る途中のタクシー内でも痛みは変わらず。
自宅についても30分から1時間は七転八倒の痛みが続いていたと思います。
身体中は脂汗まみれになって・・・
心配そうに見守る母が
「変わってあげられるものなら、変わるんだけど」
と言うセリフに私は気持ちは嬉しいけど、それは無理だし、とどこか客観的に考えている時に急に便意が!
トイレに駆け込んで用を足すとすっかり痛みが無くなってしまった!!
トイレからさっきまで七転八倒していた居間に戻ると、母が心配そうに私を見上げます
「うんこしたら・・・・治った」
一瞬間があって爆笑でした。
どうやら、食あたりか何かのようでした。
今それを思うにつけ、あの近所の内科の医者はすごかったなと感じます。
問診と触診だけで、上のような重大な事態になる「急性腹症」じゃない。すぐに良くなると見立てたわけですから。
今の病院だったらそういくでしょうか?
七転八倒状態で腹が痛いとうめいてる患者が担ぎこまれたら、エコーなりCTスキャンなり検査画像と血液検査に頼ろうとするんじゃないかな。
「昔の内科医の触診技術はすごかったんだよ」
と、カイロプラクティックの学校でアメリカ帰りのカイロドクター(ドクター・オブ・カイロプラクティック)に教えて頂いた記憶があります。
あの医者もそうだったのかもしれません。
さて、翌日学校に行くと、校舎の2階の窓から上半身を乗り出して女子学生が声をかけてくれました。
「裕人--、盲腸を薬で散らしたの?」
どうやら周囲では盲腸(虫垂炎)という事になっているらしい。
体育祭で全校生徒と父兄がいるあれだけの衆目のなか、教師におぶさりながら痛い痛いと運ばれていったんだから、そう思われて当たり前だよな~
「お?おぅ」
と、生返事をして真相を話さなかったのは言うまでもありません。