ある女性の患者さんの首をみた時、“この首の状態なら頭痛はあるでしょう”と納得させられたことがあります。
カルテを見るとやはり頭痛に丸印がついてます。
患者さんに聞くと、月経の前後には必ず頭痛があるとのこと。そして彼女が言ったセリフが
「鎮痛剤が手放せないんです。」
そこで今回は鎮痛剤の話です。
以前このブログ記事で鎮痛剤について取り上げましたが、(☆お薦め本「医療が病をつくる」その3☆)
今回はもう少し詳しく・・・
がんばってお付き合い下さい。
まず一般的に解熱鎮痛薬を服用する時に起こっている“痛み”とは身体の中で起きている反応の結果と考えましょう。
ではなぜ痛みが起きるのか?
まず体の組織が外傷や感染などによって傷害を受けると、細胞膜が破壊され、膜を作っている構成成分のリン脂質がアラキドン酸を遊離させます。このアラキドン酸がカスケード(階段状の分れ滝という意味)と言われる反応系を起こし、次々と合成物を生成します。例えば遊離アラキドン酸→シクロオキシゲナーゼ→プロスタグランジン→トロンボキサンという具合にです。
この過程でできる合成物が傷害を受けた場所に炎症を起こし、結果、痛みも発生するのですが、アスピリンに代表される消炎鎮痛剤は遊離アラキドン酸→シクロオキシゲナーゼの過程をぶった切ることによってプロスタグランジンの合成を抑制し炎症反応を鎮めようとするものなのです。
生理学を勉強すると、生物の体というものは下手な化学工場のプラント施設なんかとは及びもつかないような精密な仕組みを持っています。もし炎症から引き起こされる一連の反応系が何百万年という進化の過程で得てきた体の防御・治癒の仕組みであるならば、“痛み”というものが不愉快なために途中の過程をぶった切るということは、痛みを治したと言うのではなく一時的に隠した、というのが妥当かもしれません。
少し長いのですが未来免疫学の著者の安保教授の説を引用させていただきます。
-肩こり、腰痛などの痛みは血流障害を改善させようとする副交感神経の反射であって治癒反応の1つである。
また、消炎鎮痛剤はプロスタグランジンの合成を抑制し、交感神経刺激反応を誘導する。
その連続使用はあらゆる症状や病態をつくることになる。
頻脈、高血圧、抹消循環不全(手足が冷たい)、顆粒球増多、粘膜破壊、関節や骨の変形、尿量低下、腎障害、不眠、易疲労性(いつも疲れる)食欲不振、便秘、口渇、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中・・・etc-
私も絶対服用しない、というわけではありません。仕事に差し障るときには使用します。ただ、こういった説を知って使用するのと知らないで使用するのとは違うと思います。一番望ましいのはこういった“痛み”の起きにくい体質をつくっていく事だと思うのですが、いかがでしょうか?
次回も痛みの話と治り易い人、治りにくい人についてです。