前回から話は続きます。
身体を前傾姿勢から垂直方向へ戻すように反らすと、仙骨部に痛みが出る症例について股関節が解決の「鍵」となるケースがあるという話でした。
上は骨盤の模式図です。
中央下段の恥骨に向けて両側にV字状にあるのが鼠径靭帯。
背骨の一番下の両脇に蝶が羽を広げたように見える場所が仙腸関節付近となります。
私が主要に使っているカイロプラクティックのテクニックのひとつにSOT(Sacro Occipital Technic:仙骨後頭骨テクニック)があります。
その中の検査法に「アームフォッサテスト」というものがあります。
仰向けに寝ている患者さんの左右上下に4分割した鼠径部に軽く触れ、筋力テストの弱化で仙腸関節のどこに問題があるかを調べる方法です。
以前、ハワイ州立大学医学部で解剖実習をした時、マーク・ピックDCが「アームフォッサテスト」について以下のように説明をしていました。
例えば右の仙腸関節上部の関節面と右鼠径部の感覚神経は同位レベルで求心性に大脳へ情報が伝えられる。
右仙腸関節下部も、左仙腸関節の上部・下部も同様。
今仮に右仙腸関節上部に障害があり、右鼠径部に軽く触れると右鼠径部の感覚神経は求心性に大脳へ情報を伝えられる途中、混乱(確かconfusionと言っていたと思う)が生じる。
それにより腕の筋力が弱化する。
あれだけ仙腸関節の障害→鼠径部にサインとして出るという関係を勉強・研究していたのに、逆の鼠径部の障害→仙腸関節にサインとして出る、という事が思い浮かばなかったわけです。
ご参考までに仙腸関節障害についての医学的見地のサイトはこちら
→http://sentyo-kansetsu.com/sentyo.html
日本仙腸関節協会では仙腸関節の障害から発する関連痛が100例中21例が股関節に出ているのが分かります。
→http://www.sendai-shaho.com/forpatient/sentyou.html#contenth34
仙台社会保険病院のサイトでは股関節障害を疑われたり、消化器科や泌尿器科を受診する患者が稀ではない、ということが分かります。
さて、ジョージ・グッドハートDCのセリフ「神様はあなたにある症例を克服させるために、何度も同じ症例の患者を送り込んでくる。」
先日40歳代の女性の看護師の方が初来院されました。
「1ヵ月半前から左の腰が痛くなりだしました。ここ最近非常に痛み出したんですが、それが移動して左の下腹部が痛くなったんです。」
「左腰が痛い時、病院の整形外科でレントゲンを撮ってもらったんですが、異常なし。」
「左の下腹部が痛くなった時は、腸か何かの病気かと思って内科を受診したのですが、血液検査でもエコーでも特に問題無しで鎮痛剤を飲んでます。」
私は仙腸関節と鼠径部は関連が深いことと、障害があると思われる仙腸関節を直す方向に軽く触れると、弱化した筋力テストが強くなることを示しました。
そのときの彼女のセリフが
「なんだ!もっと早くここに来てれば良かった!」
このような経験(課題としての症例が送り込まれてくる)は今でも続いているのです。
☆第Ⅶ脳神経☆でも触れた胸鎖乳突筋―側頭骨―耳鳴りの症例も然り。
あなたいつも腰痛・肩こりでしょう!?という人がその期間(課題としての症例が送り込まれてくる)に限って、耳鳴りを訴えてきたりするのです。
神様(そういう存在があるのか分かりませんが・・・)は課題・問題をその人の前に提示してくる。
それを克服すればまた上のステージに上がれる。逃げれば下のステージのまま。
そうやって日々成長していくのかもしれません。