さて今回は前回からの続きで、記憶の保管場所は脳だけではない?!と言う話です。
言いたかった事をもう少し正確に表現すると、記憶を呼び覚ます誘発要因や情動の引き金になる場所が脳以外にもあるのではないかと言う事なのです。

 その代表的な例が内臓器で、肝臓です。
肝臓に情動の誘発要因があるのでは、と考えられたきっかけは実は臓器移植なのです。
この臓器移植を受けた(他人から肝臓の臓器提供をしてもらった)患者さんが自分が自分でない感覚を持つそうです。
肝臓は脳内物質セロトニンの元となる材料を作っていますし、性ホルモンの元になるDHEAという物質も分解をしていて、脳内での意識、性欲、睡眠などに大きく影響を及ぼしています。また、記憶に関与する物質も肝臓で合成されているのです。
そういった観点から見ると、脳に収められている情報だけではなく内臓器の情報が情動や記憶に関与していると考えられるかもしれません。

 アンドルー・ワイルがその著書の中で師と仰いだオステオパシー医ロバート・フルフォード博士もお腹に情動の中枢があるとしてます。
その場所は太陽神経叢(腹腔神経叢)
腹腔全ての臓器に向けて放射状に伸びていて動きをコントロールしている神経の集まりのような箇所になります。
英語で「ガット・フィーリング」(腹の底からくる感じ)はまさにその太陽神経叢からくるものだ、との事。

 さて、ここからは臨床での話となります。
アロハカイロでは初回の時に問診表に健康状態や過去の病歴をご記入頂いています。
問診で過去の怪我に関しては何十年前のことであろうとも執拗にお聞きすることにしています。
でも、それはあくまでも脳に収められていてアウトプットしやすい長期記憶のようです。

 臨床の場で調整している時にたまに忘れていたような過去の怪我を思い出していただく場合があります。
例えば、ポジショナル・リリースというテクニックがあるのですが、これはある場所に押すと痛みがあるとします。その痛い場所押しながら、患者さんに痛みが消える姿勢になるまで色んな体勢をとってもらいます。その体勢でじっとしていてもらうのですが、そのときに患者さんが

「そういえば、問診のときには全然思い出さなかったのですが、今この体勢になって思い出したのですけど・・ン年前にまさに今押さえられているところを打撲したんです。その時の体勢が今とっている体勢なんです!!」

などという不思議なこともあるのです。

 こういうことによく出くわすと、記憶とは脳だけにあるものではなく身体のいたるところに収められているのでは?という印象を持ってしまうのです。
さて、あなたはこの話を科学的な根拠のないオカルト話だ、と思うでしょうか?