前回は太平洋を伝播して行く波のメカニズムについての話でした。
波はお互い打ち消しあったり、重なったりして大きくなり、同心円状にうねりが伝播して行く、という事でした。

 今回は人の身体の中にある波についてです。
人の身体は2/3が水分で出来ています。
非常にリラックスした状態で寝ている人の頭頂部を指1本でほんの5ミリほど押しても、つま先まで身体が揺れていきます。
人の身体を膜に包まれた液体と捉え、波の出来るメカニズムを知ると、とても面白い仮説が立てられるのではと思うのです。

 オステオパシーやカイロプラクティックのSOTでは身体に「第1次呼吸リズム」と呼ばれる固有のリズムがあるとされています。
これはCRI(クレニアル・リズミック・インパルス)や頭蓋仙骨リズム、サザーランド波等と呼ばれる事もあるのですが、身体の中のとても微細なリズムを指しています。

 これは1分間に6~12サイクルのリズムで、呼吸とも心拍とも異なるリズムなのです。
このリズムが発生する原因は脳脊髄液の循環する動きにあるとする説や、それに加えて呼吸の動きが加わって固有のリズムが出来るとする説など色々あるのですが、理論はさておき熟練してくると確かにこのリズムを感じることが出来るようになります。

 また、様々な臓器は固有のリズムで動いています。
代表的なものでは心臓、横隔膜、脳脊髄(これは以前☆脳脊髄は踊る☆で触れました)そして腸。
腸の蠕動運動は太古の昔から波のリズムを刻んでいると言う鋭い洞察もあります。
これは生物がまだ原始的な腔腸動物で海で生活していた頃、食物を捕捉し消化し排泄するのに波の力を借りて管の中を通して行った名残がいまだ腸に刻まれている、という考えです。

 さて、ここで波の出来るメカニズムを見ていてひらめいたのがこれら各臓器の動きがそれぞれ体内という水の中で波となり、あるものは打ち消しあい、あるものは重なり合って同心円状に広がってできたのが「第1次呼吸リズム」と呼ばれる固有のリズムではないかという考えです。

 なぜこれほどに私が「第1次呼吸リズム」にこだわるのかと不思議に思われるでしょうが、このリズムを整える事で劇的に症状が変わる人を過去に見てきているからです。(大先輩の先生の治療であったり、ささやかながら自分の施術であったりするのですが)そして、この腹の奥から起こる同心円状の波は他の療法でも起こっているのではないかと思うのです。
呼吸法や鍼や経絡やその他色々な療法で・・

 身体の中でバランスがとれて起こるこの波は、片岡義男の小説的な表現を借りれば、身体の中に「海を呼び戻す」事になると思うのです。
すみません。今回はとてもマニアックな内容でした。