☆看板を背負って立つその4☆

前回から話は続きます。

身体を前傾姿勢から垂直方向へ戻すように反らすと、仙骨部に痛みが出る症例について股関節が解決の「鍵」となるケースがあるという話でした。

 

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上は骨盤の模式図です。

中央下段の恥骨に向けて両側にV字状にあるのが鼠径靭帯。

背骨の一番下の両脇に蝶が羽を広げたように見える場所が仙腸関節付近となります。

私が主要に使っているカイロプラクティックのテクニックのひとつにSOT(Sacro Occipital Technic:仙骨後頭骨テクニック)があります。

その中の検査法に「アームフォッサテスト」というものがあります。
仰向けに寝ている患者さんの左右上下に4分割した鼠径部に軽く触れ、筋力テストの弱化で仙腸関節のどこに問題があるかを調べる方法です。

以前、ハワイ州立大学医学部で解剖実習をした時、マーク・ピックDCが「アームフォッサテスト」について以下のように説明をしていました。
例えば右の仙腸関節上部の関節面と右鼠径部の感覚神経は同位レベルで求心性に大脳へ情報が伝えられる。
右仙腸関節下部も、左仙腸関節の上部・下部も同様。
今仮に右仙腸関節上部に障害があり、右鼠径部に軽く触れると右鼠径部の感覚神経は求心性に大脳へ情報を伝えられる途中、混乱(確かconfusionと言っていたと思う)が生じる。
それにより腕の筋力が弱化する。

あれだけ仙腸関節の障害→鼠径部にサインとして出るという関係を勉強・研究していたのに、逆の鼠径部の障害→仙腸関節にサインとして出る、という事が思い浮かばなかったわけです。

ご参考までに仙腸関節障害についての医学的見地のサイトはこちら
http://sentyo-kansetsu.com/sentyo.html
日本仙腸関節協会では仙腸関節の障害から発する関連痛が100例中21例が股関節に出ているのが分かります。

http://www.sendai-shaho.com/forpatient/sentyou.html#contenth34
仙台社会保険病院のサイトでは股関節障害を疑われたり、消化器科や泌尿器科を受診する患者が稀ではない、ということが分かります。

さて、ジョージ・グッドハートDCのセリフ「神様はあなたにある症例を克服させるために、何度も同じ症例の患者を送り込んでくる。」

先日40歳代の女性の看護師の方が初来院されました。
「1ヵ月半前から左の腰が痛くなりだしました。ここ最近非常に痛み出したんですが、それが移動して左の下腹部が痛くなったんです。」
「左腰が痛い時、病院の整形外科でレントゲンを撮ってもらったんですが、異常なし。」
「左の下腹部が痛くなった時は、腸か何かの病気かと思って内科を受診したのですが、血液検査でもエコーでも特に問題無しで鎮痛剤を飲んでます。」

私は仙腸関節と鼠径部は関連が深いことと、障害があると思われる仙腸関節を直す方向に軽く触れると、弱化した筋力テストが強くなることを示しました。
そのときの彼女のセリフが

「なんだ!もっと早くここに来てれば良かった!」
このような経験(課題としての症例が送り込まれてくる)は今でも続いているのです。
☆第Ⅶ脳神経☆でも触れた胸鎖乳突筋―側頭骨―耳鳴りの症例も然り。
あなたいつも腰痛・肩こりでしょう!?という人がその期間(課題としての症例が送り込まれてくる)に限って、耳鳴りを訴えてきたりするのです。

神様(そういう存在があるのか分かりませんが・・・)は課題・問題をその人の前に提示してくる。
それを克服すればまた上のステージに上がれる。逃げれば下のステージのまま。
そうやって日々成長していくのかもしれません。


☆看板を背負って立つその3☆

以前 ☆看板を背負って立つその2☆ でまったく耳が聞こえなかった86歳の女性が膝痛でご来院された時の出来事を書きました。
その結びはこうでした。

以前、仲井DC(ドクターオブカイロプラクティック)のセミナーでアプライドキネシオロジーテクニックの創始者ジョージ・グッドハートDCから聞いたというセリフが思い出されます。
「神様はあなたにある症例を克服させるために、何度も同じ症例の患者を送り込んでくる。あなたはそれに立ち向かいチャレンジし技術を向上させなければいけない」
どうやら患者さんは症状と言う「課題」を持ってきて私たちを鍛えてくれているようです。

さて、私がカイロプラクティックを学び、実践しだして、かれこれ16年。
ここ鎌倉の由比ガ浜で治療院をオープンさせて10年少々。

これは気合を入れていかねば!という症例に出会う機会が減り、あぁ あのパターンで上手くいくだろうな、という時期がありました。

で、上のジョージ・グッドハートDCのセリフ。
これが本当にあるよな~と実感しきりのこの頃です。

まずは急性腰痛、ぎっくり腰。
ここアロハカイロ&フットパラダイスにぎっくり腰でご来院された方ならお分かりかと思いますが、1~2回の施術で随分改善するのです。

直立位からお辞儀をするように前かがみをすると、20~30度で腰に痛みが出て「うっ!!」 前かがみで痛みが出るパターン。
—骨盤と腰椎○番を調整すればいいな。

前かがみの状態から身体を後ろに戻してゆく時や、イスから立ち上がる時に手を使って身体を起こさないと痛みが出るパターン。
—骨盤と腰椎□番を調整すればいいな。

直立位から前かがみも、後ろに反らしても、左右にねじっても、倒しても痛い。 複数方向に動かして痛みが出るパターン。
—骨盤と腰椎△番を調整すればいいな。

9割がた過去の施術パターンを引用してやれば改善する。
金曜日に前かがみで「うっ」と痛んでいた人が、施術の翌日の土曜日には全然痛みも無く海で磯釣りをしていたそうです。
そんな改善具合を後日報告してくれる方が多いのです。
ただ、いまひとつ改善具合が良くないぎっくり腰があったのです。(今となっては過去形ですが)

それは、後ろに反らした時だけ仙骨部に痛みが出るパターン。
これは過去に数名来院されたかな。

共通しているのは、他のぎっくり腰のようにねじって、屈んだときにギクッとやった!というような明確なきっかけが無いこと。
皆さん「なんとなく痛み出した」と言っているのです。
そして、10度ほど身体を前に傾けて、お尻を後ろに引くような(へっぴり腰)姿勢でいれば、痛みも無く動き回れもするとの事。

過去に先輩やインストラクターから教わった箇所を調整しても、いまいち芳しくない。

そこで、患者さんは症状と言う「課題」を持ってきてくれているんだ、と一生懸命課題克服のためあれやこれやと調べ、研究していると不思議なことにそんな症例が立て続けに、こちらに向けてやってくるのです。

普段は首とか肩がつらいと言って来ていたのに、腰が痛いなんて言って来た事が無いのに、そんな人が入り口のドアにへっぴり腰で立っていたりする。
「これといって思い当たらないんだけど、まっすぐに立とうとすると痛いのよ。」
もう何年も何十回も来てくれてる女性が、そういうドンピシャなタイミングでやってくるのです。

「あ―股関節か!!」

うん!うん!と脳みそに汗して、解決策を探していると見落としていた箇所にひらめくものなんですね。
その瞬間に改善具合が良くない過去に数名来院された人との会話を思い出したりするのです。
「あぁ、あの時あの人は車の運転をしていていつもと車の装備が違うので・・・と言ってたな。あそこにヒントがあったんだ!」

それから、その女性の知り合いが同じ症状で困っていたと紹介で来たり、新規でご来院の人がやはり反らす動きだけが痛い腰痛で来たりと、
同じ症例が立て続けに私に向かってやってくるのです。

しばらくして、まぁこの施術パターンでいけばほぼ大丈夫だろう、という自信が持てた頃、不思議とピタッとその症例が来なくなるのです。

やはりジョージ・グッドハートDCの
「神様はあなたにある症例を克服させるために、何度も同じ症例の患者を送り込んでくる。あなたはそれに立ち向かいチャレンジし技術を向上させなければいけない」
というセリフは名言だなと感じさせられるのです。

さて、次回もこの話は続きます。


☆脚長差今昔その2☆

 前回は施術者の立場からみた脚長差についてでした。
さて、今回はまだ私が中学生だった頃の話です。
そのセミナーの情報を知ったのは市の発行する広報誌にセミナー告知の欄があり、そこに身体の歪みを直すセミナーと銘打って載っていたのをたまたま見たからでした。

 今にして思えば身体の歪みに興味があるなんて我ながら変わった中学生だったな、と自嘲したりもするのですが・・・その当時少年マンガ誌には○×式長身法などの広告があり、身体の歪みをとると背が伸びる!!風なキャッチコピーが脳裏に焼きついていたから、興味があったのかもしれません。

 さて、当日会場は市の中心部にある市民会館の一室で和室でした。
広さは約20畳。スタッフは白衣を着た先生風の男性と中年の女性が2人。
参加者は私を含めて5人ほどです。ウィークディの午後早くに行われたためか、私以外は専業主婦風の女性ばかりです。
セミナーの前半は身体の歪みがいかに健康にとって有害かを強調する内容でした。
そして、参加者の中からモデル一人が選ばれます。
彼女を被験者にして、身体に歪みがあるとはどういうことなのかを説明していったのです。
その中で、骨盤の歪みからくる脚の長さの違いが紹介されていたのです。

 さて、ここからがセミナーの核心です。歪みが出来る原因は寝具に問題があり、この寝具とある調整法を使えば身体の歪みは無くなり、健康になる!!というものでした。
その寝具と言うものは、私にはただの畳に周りを木枠で囲んだものにしか見えないませんでした。
なにやら効能がある構造のように講釈をしていたのですが、その時点で胡散臭さ全開でした。

 そして、先程選ばれたモデルの女性をその寝具の上に寝かせ、なにやら調整を施すと確かに脚の長さが同じ長さに揃うのです。
さあここで、その寝具の値段の発表です。
確か、10万から15万円ぐらいの値段だったと思います。(はなっから買う気が無かったのであいまいなのですが・・・)
後は、全員に購入のための契約書が配られます。その中で気弱そうな主婦2人組にスタッフの女性が張り付き、説得を開始します。

「今すぐに決めなきゃ!」
「いや~帰って主人に相談してみないとー」
「健康のことを考えたら、これは安い買い物だから・・・」

と、そこへ中年の男性が突如入室してきて土下座をし、大きな声で挨拶を始めます。

「先生、遅れて大変申し訳ありませんでした。○×市(セミナー会場から約70キロ離れた街)からやってきた△☆でございます。おかげさまで、その後も体調がすこぶる良く今日も調整をして頂きたくやってまいりました!」

すかさず、スタッフの女性が言います。
「ほーらね。あんな遠くからでも健康になったて来る人がいるのよ!悪い物なはずないでしょ!」
胡散臭い。胡散臭すぎる!

 土下座をして口上を述べた男性の棒読みのようなセリフ。
しかも、絶妙のタイミングで入ってくる不自然さ。
その当時私は中学生だったのです。
中学生と言えば頭の中は単純でいつも考えていることと言えば腹へって食うことと、女の子のことぐらいしか無かったんじゃないかと思います。(極端に言えば左脳に食欲があり、右脳に色欲があるような・・・)
そんな中学生に胡散臭いとバレバレのセミナーだったのです。
当然、彼らはイガグリ頭の見るからに中学生の私にはわき目も触れず、契約獲得に邁進をしている様子でした。

 その後、成約があったのかどうかは知りません。
ただあの種の商法は同じ土地で何度も使えるものではないと思うのです。
まだあのやり方は健在なのでしょうか?
健在なら全国津々浦々行商をしているのでしょうか。

 ただ、あの当時、脚の長さの違いを見せられた時は参加者全員が「おぉ!」と驚いたのです。
そして、長さが揃った時またもやそれ以上に驚いていたのです。
そして、冒頭の感想に立ち返ってつくづく脚の長さの違いについての認識(=健康知識に対する認知度)が変わったものだと思うのです。


☆脚長差今昔☆

 カイロプラクティックではベッドでうつ伏せになって頂いた時、身体を真直ぐにして左右の脚の長さをみる場合があります。
最近、新規の方に「脚の長さが違いますね」とご説明しても
「あぁ、ヨソで指摘されたことがあります」
とごく自然にいう患者さんが増えたな~という印象があります。

 そこで今回は、なぜ脚の長さに左右差が出来るのか、個人的な見解とカイロプラクティックで脚の長さをみる理由をご説明させて頂こうと思います。
実は、脚の長さの違いといっても骨の長さの違いではなく、(まれにそういったケースもありますが今回のテーマとは異なります)見かけの長さの違いのことなのです。

 では、なぜ見かけの長さの違いが出来るかというと、筋肉の長さに差が出来るからだろうと思われます。
アロハカイロ&フットパラダイスのHPで『ノーマルディストーション』を取り上げました。
利き足の考え方です。

あなたは利き手は右でしょうか?右利きならばかなりの確率で利き足も右のことだと思います。
(利き足はサッカーボールを蹴るときの足、掃除機をかけるとき後ろに配置する足)

 私の観察では日常生活でこの利き足を中心に使われることが多いようで、長時間立ちっ放しの時などは利き足側に体重をかけて立つほうが多いようです。
そうすると体重支持のために利き足側の筋肉群が収縮していることになります。この習慣が何十年と言う単位で反復されることにより、相対的な筋肉の長さの左右差が出来、利き足側がより体の中心部に引き寄せられるようにして見かけ上の脚の長さの差が出来るのだと思います。
そして、この筋肉群の緊張の差が骨盤や体幹を捻る原因となります。

 具体的に言うと、利き足側の骨盤が後方に捻れるケースが多いようです。
どこかのカイロプラクティックや整体院で脚の長さを比較され、「右足が短いですね-」
と指摘を受けたことはありませんか?
 私も常日頃、短いほうを言うより
「左足のほうが長いですね」
と言った方が相手に対する心証がいいだろうと思うのですが、実は、カイロプラクティックでは後方にズレているものを前方に矯正するのを主題にしているのです。

 身体の構造を考えれば、当たり前なのですが・・・
背骨の捻れを前側から矯正しようとすると、お腹や胸側から内臓を超えて背骨に達する圧が必要になります。
それよりも、背中側から後方に捻れているほうを矯正したほうがやりやすいので、後方への捻れを探すことが重要になるのです。

 そこで骨盤に話を戻して、後方にねじれている側は足が短い。という法則をいつも一生懸命探しているから、先程の「右足が短いですね-」という表現になってしまうのです。

 以前と比べ巷でカイロプラクティックや整体を施術する人も増え、また、受ける人も増えたため自分の脚の長さに違いがあると認識してる人がずいぶんと増えたな-と言う実感があります。

 さて、次回は世間ではそんな認識が薄かった30年ほど前に私が体験したある怪しげなセミナーの話です。


☆鎌倉長寿の秘訣☆

 アロハカイロ&フットパラダイスではいつも新規の患者さんに問診表をご記入いただいています。
その問診表には生年月日をご記入いただく欄があるのですが、
「あら。大正の欄がないわね・・・」
というお声がありました。
その時に
「すみません!次回印刷のときにその欄を作ります」
とお詫びをしていたのです(汗)

 アロハカイロ&フットパラダイスのHPの中で「来院具体例」のページにご来院頂いた方々の性別・年齢構成を載せていますが、それを見てもおわかりの通り女性・30代が圧倒的に多いのです。
この傾向は開業前から予想していた通りなのです。
そこで、大正生まれの方(今現在で80代)にはご利用頂けないかな~と、弱気な予測で問診表印刷時に大正生まれの欄を設けなかったのです。

 が!しかし、先程のように大正生まれの方のご来院が増えてきました。
というのは、50代の方がまずご来院頂いてその方の親御さんをご紹介頂けるケースが増えたからです。(中には親子3代でご来院いただいているケースもあるのです)大変ありがたく感謝しています。
そして、80代の方のお元気なこと元気なこと!

 その皆さんに共通している特徴があります。
まず、気が若い!若い人と混ざって引けをとらないで頑張れる趣味があったり、お召しの洋服の色使いが華やかであったり、見た目に若いのです。

 そして、好奇心がとても旺盛です。携帯電話を買って他人には教わらず、マニュアルを読みメールを使いこなしたりetc
これも当たり前のことなのですが、身体を元気な良い状態に保ってあれもしたいこれもしたいという意識がしっかりしているのです。

 最後に付け加えるなら、土地柄もあるかもしれません。
ここ湘南のエリアは適度な距離で田舎です。交通網は発達していないので、歩く機会も多いのです。
それに、空気も良く新鮮な海産物が食べられる環境も大きな条件だと思います。

 いぃですよ-海の近くは!
転勤・入学などで住環境を変える方も多いと思いますが、どうですか?
海の近くで住んでみるのは。


☆看板を背負って立つその2☆

 最近、寝不足が続いています。
ワールドカップ開幕直前のふがいない試合をしていた日本代表が豹変し、快進撃を続けてる。
それにつられて他の国の対戦カードもついつい見てしまう、今日この頃です。

 さて、前回の「整形外科あきらめ案件」の話が続きます。
ここアロハカイロ&フットパラダイスにはその他多くのそういった(病院で改善がみられなかった)症例を訴えてこられる方が沢山います。(他の治療院でも多いんじゃないかな)

 思い出すままに書き出すと、ギックリ腰、ヘルニア、足底痛(歩くたびに足の裏が痛む)、顎関節症(これは口腔外科からですね)、寝違え、手足のしびれ、手根管症候群など等。
先週は整形外科に「五十肩」と診断されて、毎日リハビリに通うように勧められて2,3回行ったけれども、納得がいかないとご来院された方もいました。

 今回の話は今月始めに膝痛でご来院された方の話です。
その方は86歳の女性で、昔左膝を骨折していてプレートを入れたまま。
先月、転んで右膝を打撲して、徐々に痛みがひどくなり、リハビリに通っても改善がみられないとの事。

 その方が始めてご来院されたのは直接訪問でした。
(アロハカイロ&フットパラダイスでカイロプラクティックの初回の予約はほぼ95%が電話予約なのです)
私は電話中で受話器をとりながら話していた時に、後ろで大きな声が
その方「こんにちは」
私が振り向くと年配の女性が杖をついて入り口に立っています。
私が電話中である事に気がついて
その方「あぁ、電話中ね。ここで待っています」
私が用件を済ませて入り口に行くと、
その方「私は右足が痛くてね。一度診てもらえないかと思ってね」
私「どう悪いんですか?」
その方「私は耳が聞こえなくてね。全く聞こえないの。紙に書いてもらっていいかしら」

 そこから私がメモに聞きたいことを書いて、その方が答えるという半筆談形式のコミュニケーションが始まります。
これがまどろっこしい。

 それにアロハカイロ&フットパラダイスのカイロプラクティックをお受け頂いた方にはよく分かると思うのですが、施術の前も施術中もかなりコミュニケーションを多くとるのです。
問診で痛む場所はどこか、何時からか、どうすると痛むのか、きっかけは何か、など等
施術中もこの肘をこちらの方向へ息を吸いながら弱い力で動かして、そこで止めて、今度は息を吐きながら力を緩めて・・など等。
患者さんとのコミュニケーションと協調作業が必要不可欠なのです。

その手段が取れない。
半分以上、この方を施術するのは難しいな。出来ても良い結果が期待しにくいな。
と思っていたところ、
その方「私は膝が痛くて階段を登るのがきつくてね。この前やっと登ったと思ったら定休日だったの」
両膝が悪くて階段を登るのがやっとの方が、1度のみならず2階も登って来てくれて今目の前にいる、これは頑張ってやらねば!と思わされました。

 それからは言葉が聞き取れない方に対して出来る調整法を組み立てて、最低限協力して動かしてもらう事をカードに書いて、半筆談を交えながら、調整を進めてゆきました。
どうやら2回、3回と施術するたびに膝が楽になったと喜んで頂けているようです。

 振り返るとあの時、よしやろう!と引き受けさせて頂いてよかったと思っています。
全く耳の聞こえない方に対しても、こうやれば何とかできるんだ、という引き出しがひとつ増えたような気がするからです。

 治療院と患者さんの関係はまるで教師と生徒の関係のようです。
患者さんが教師で、施術者が生徒です。
そして、患者さん(教師)から症例という「課題」をもらう。
それに対してどう改善させようかと、無い知恵を絞って、時には冷や汗をかいて克服してゆく。

 以前、仲井DC(ドクターオブカイロプラクティック)のセミナーでアプライドキネシオロジーテクニックの創始者ジョージ・グッドハートDCから聞いたというセリフが思い出されます。
「神様はあなたにある症例を克服させるために、何度も同じ症例の患者を送り込んでくる。あなたはそれに立ち向かいチャレンジし技術を向上させなければいけない」
どうやら患者さんは症状と言う「課題」を持ってきて私たちを鍛えてくれているようです。


☆看板を背負って立つその1☆

 今回は治療院として看板を掲げていてそれに恥じないように頑張るという話です。
さて、今回は2003年12月に30歳代後半の女性の患者さんが来られた時の話です。

 彼女の来院されたときの主な症状は腰痛でした。過去整形外科でのMRIでの検査結果は腰椎の椎間板が減少していてほとんど無い状態に近いとのこと。
痺れは無いのですが、常に鈍痛があり1時間ほど歩くと急に辛くなりうずくまってしまうそうです。

 過去整形外科、治療院、接骨院等など色んな所に行ったけれど芳しい結果が得られなかったと、初回の問診時に仰っていました。

 さて、彼女には数多くのスポーツの趣味があり、その中でもフリークライミングがとりわけ好きなようです。
彼女の最終的な目標としてはこの腰痛を気にせずフリークライミングが存分に出来るようになることです。

 初回の調整が終わった時点で私と彼女との話で、まず歩いていてもうずくまったりしない状態にすること、それから、腰痛を緩和させてゆくこと、そして、様子を見てフリークライミングをしても腰に負荷がかからないような状態に持ってゆくこと、が共通の目標(調整の指針)となったのです。

 施術者としての私の立場からは、彼女は背骨の彎曲(横から見たS字カーブ)が強いタイプなので、まず、腰の彎曲を減らすことが目標になります。
患者としての彼女には、今までヨソで腹筋を鍛えろと言われてひたすら鍛え上げた硬く短縮した腹筋を逆に休めてもらうことにしました。

 5回の調整を終え、ある程度腰に対する目途がついた時点で次からはフリークライミングをしても腰に負荷がかからないよう、胸の部分の彎曲を減らしてゆこうという話になりました。
その折彼女が帰る間際に言った言葉が印象に残ったのです。

「病院では今の腰痛は手の施しようがない。それにあなたの腰ではフリークライミングのような運動は永久に止めたほうがいい、と言われました。でも、どうしてもフリークライミングをしたいんです!よろしくお願いします。」

 こういうセリフを聞くと俄然気合が入ります。
ヨソでダメでもウチで何とかできないものか!
他にもここアロハカイロ&フットパラダイスに来られる患者さんから聞いた話では

-病院から日常生活に支障はないのだからこの程度の不調は我慢していきましょう、と見放された-
-週2、3回のリハビリをするよう言われたけれど、ホットパックと電気をあてるだけで改善する兆しが見られない-

などと言う病院側からあきらめられたり、患者さん側があきらめたりしたりする。
そこで別の手段がないかと来院してくる。
こういう症例を私は「整形外科あきらめ案件」と呼んでます。
(ウソです。今思いついただけなのです)

 その後の彼女の経過はと言うと、最初の3ヵ月は2週間に1度のペースで調整をして、その後は1月に1度のペースで調整をして半年後の5月にはおっかなびっくりでも、フリークライミングを出来るようになりました。

 その後、何度かの腰痛が再発するたびにクライミングの現場からSOSの電話があったりもしたのですが、いまでもお元気にされていて2010年現在もたまにご来院されて調整を受けています。

 おかげ様で、病院で芳しくない症例でも一生懸命やれば改善するケースもあるんだ、という自信を彼女から貰ったように思います。
せっかく看板を掲げているのですから、それなりの格好のつく仕事をしたいじゃありませんか。